こんにちは、タマです。
中国株の下落が続いていますね。
中国政府はIT企業への規制を強化し、ユーザのプライバシー保護や他企業に対する優越的地位の取り締まりなどを行っています。
- 昨年11月、アリババグループ傘下のアントグループの上場延期
- 4月、アリババグループに巨額の罰金を科し、テンセントなど他社にも相次いで指導や罰金処分
- 7月、米国に上場したばかりのDiDiに対して「違法に個人情報を収集している」としてアプリのダウンロードを禁止
- 7月、国内ネット音楽配信市場における独占行為で、テンセントに対して独占禁止法違反で是正措置と罰金処分
また、政府の規制強化はIT企業だけでなく教育産業にも及び、小中学生向け学習塾を非営利団体化する規制策を公表しました。
キャシー・ウッド氏が中国株撤退
日本でも人気のアークイノベーションETF(ARKK)を運用するキャシーウッド氏が中国株を売却しました。これで中国株へのエクスポージャーがゼロになったようです。
キャシーウッド氏は中国株を売却した理由として、
「中国が海外資本を受け入れる姿勢になり、もう少し世界に組み込まれたいと望むようになるまで、中国株のバリュエーションは長期にわたって低いままだろう」
とコメント。また、中国政府の取り締まり強化については、
「世界で最も革新的な国になりたいという望みに逆行している」
と指摘しました。
これだけを見ると中国株には未来がなさそうな感じがしてしまいますが、キャシーウッド氏は8月10日に、
「われわれが現時点で注視しているいかなる分野においても、これら企業の投資尺度の構造やバリュエーション構造は下落し、恐らく急速な回復は見込まれず、一段の下落の可能性もある」
「そうであっても、イノベーションの領域で非常に興味深い企業が幾つか見つかると確信しており、このため常にオープンな姿勢でいるつもりだ」
と話し、中国株はしばらく低迷する可能性があるとしつつも、中国株を完全に切り捨てているわけではないようです。
ブラックロック社、中国への投資配分引き上げを推奨
資産運用会社であるブラックロック社の調査部門は、中国はもはや新興市場と見なされるべきではなく、中国資産へのエクスポージャーを最大3倍に増やすように勧めたようです。
ブラックロック・インベストメント・インスティテュートのウェイ・リ氏はインタビューで、
「中国は世界の投資家のポートフォリオだけでなく、世界のベンチマークの中でも比率が不当に小さい」
「株式も債券も世界第2の市場なので、もっとポートフォリオに組み入れられるべきだ」
と指摘しています。
ヒュー・ヤング氏、中国は投資可能・テンセント株買い増し
アバディーン・スタンダード・インベストメンツのヒュー・ヤング氏によると、同社は中国当局によって下落したテンセント株を買い増したとのこと。これは中国当局による取り締まりがあっても最終的には勝ち組になると考えているためだそうです。
ヒュー・ヤング氏は、
「中国政府は国民のために、すべてをより公平にしようとしているだけだ」
「それがわれわれを中国投資から遠ざけるかと言えば、答えはノーだ」
と言明し、この規制は責任あるプレイヤーに恩恵をもらたすと語っています。
ポール・マーシャル氏、中国企業ADRは投資不可能
590億ドル規模の投資会社マーシャル・ウェイスの共同創業者であるポール・マーシャル氏は、
「これらさまざまな介入の影響、特に滴滴グローバルの米国上場前後という発表のタイミングは、米国を拠点とする投資家やその他の国外投資家の意欲をそぐものだった」
「中国企業の米国預託証券(ADR)は今や、投資不可能と言えるだろう」
と指摘しました。
この他にも、ジョージ・ソロス氏の投資ファンドや複数の著名ヘッジファンドがすでに中国へのエクスポージャーを減らしているようです。
中国政府の規制強化について
※ここからは私の個人的な意見です。
まず、私は中国政府の狙いとして国内の個人データやビッグデータの流出防止が挙げられるのではと思います。
データ流出防止
これまでは米国が中国への米国内のデータ流出を恐れているようなイメージでしたが、中国も同じように海外(特に米国)へのデータ流出を強く恐れているのではないでしょうか。
米ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、中国政府はDiDiが米国市場に上場する数週間前に、「IPOを延期してネットワークの安全性について社内で入念な調査を実施すべき」という方針を同社に伝えていたようです。しかし、政府はIPO中止までは命じていなかったことから、DiDiは上場を決行しました。
そして上場から数日後、政府はDiDiに対してサイバーセキュリティ審査を開始し、新規ユーザの受付を禁止。また、アプリ配信ストアからDiDiのアプリを排除し、ダウンロードを禁止したわけです。
この政府のやり方はとても衝撃的でしたが、中国のネット大手は政府も驚くほどの莫大な個人データを蓄積しており、それによって巨額の利益を上げていることを考えると、そのデータが海外市場を通じて流出することを恐れていても不思議ではありません。
7月4日には、「米国に上場し、主要株主が外国企業である場合、国家は情報の安全をさらに厳格に管理する必要がある」と、海外へのデータ流出の警戒感を示しています。
以前にあったアントグループの上場延期やテンセント、アリババに対する規制も考慮すると、中国政府は「イノベーションを促進して世界の中心に!」という目標の前に、自国のデータ管理や統制強化といった環境改善を優先したのではないかと考えています。
よって、一連の中国政府による規制強化は確かにマイナス要因ではありますが、長期的にはイノベーションの促進と世界のトップになるための土台作りとしてプラスに働くのではないかと思います。(今後の動き次第ですが…)
出生率の低下
2021年5月に国家統計局が2020年に実施した国勢調査の結果を発表しました。
それによると、中国の2020年の出生者数は1200万人、人口出生率は0.58%と1952年の統計開始以来過去最低だったそうです。
中国は2015年に一人っ子政策から二人っ子政策に移行しましたが、結果うまくいかず。2021年には三人っ子政策に入りました。
しかし、ブルームバーグ・エコノミクスは、中国の人口は25年にピークに達すると予測しており、中国の力強い経済拡大は急速に弱まっています。
出生率低下の要因として考えられているのは、出産適齢期の女性の減少と養育費の上昇です。
出産適齢期の女性の減少は、出生率が急速に低下した1988年から約30年後なので理解できます。
一方、養育費の上昇は各種教育費の上昇が要因です。
これまでは一人っ子政策が前提だったので、子を持つ家庭は一人の子供に対して資金を投入し、幼い頃から英才教育を施します。この影響もあって都市部では高額な教育費が定着しました。
よって、いきなり2人目、3人目の子供を持つことを許されても、大半の家庭では1人目と同等の教育費を出せるほどの経済的余裕がないため、2人目を諦めざるを得ないという状況です。
これは先に紹介した「小中学生向け学習塾を非営利団体化する規制策」にもつながってきそうですよね。
貧富の差
中国の貧富の差は年々拡大しており、所得上位の1%が下位50%全体より多くの資産を保有しているという状況です。
また、名門大学に入学した学生のうち、地方や比較的発展の遅れている地域の出身者は2割に届かず、親がエリート層でない家庭の社会的地位の向上は一段と難しくなっています。
よって、上記内容を踏まえると、中国政府による規制強化は巨額の利益を上げるIT企業の環境改善とともに、高所得層や企業に対して社会に還元するように促して一部の人に富が集中しないようにし、より良い政治・経済体制を整備するためではないかと思います。
今中国に投資して良いか
私が思う中国株への投資判断は以下になります。
長期投資:X〜△
短期投資:X
宝くじ :◯
まず短期目線では非常に投機的なので投資判断としてはNGです。
(そもそも短期投資=投機かもしれませんが)
また長期目線においても今後の中国政府の動きは読めませんし、今が底だとも思えないため、基本的には静観すべきだと考えています。
それでもどうしても買いたいという方はある程度下落を覚悟した上で購入しましょうね。
私自身も長期的には復活すると考えている人間ですが、その長期が5年なのか10年なのか、はたまた20年になるのかはわかりませんので、復活するにしても厳しい戦いになるのかなと思っています。
なお、現時点では中国ADRについて問題なさそうではありますが、突如方向転換して上場廃止なんて可能性もゼロではないので、中国株に投資したいなら中国本土の株式市場も検討したほうが良いと思います。
現状とても厳しい中国株ですが、投機的には非常に面白いので宝くじ感覚で失っても良いお金で購入するのはアリだと考えています。
静観すべきと言っておきながらなんですが、私自身は中国テック企業自体はかなり気に入っているので、そこそこ強気で考えています。
まとめ
今回は中国株の投資判断について、私の考えも含めて紹介しました。
プロの投資家でも中国株に対して意見が別れているようです。
今回のような下落は将来的な爆益チャンスにつながる可能性があるので、引き続き中国株は要注目ですね。
非常にネガティブ要素の多い中国株ですが、良い企業もたくさんあるので復活してほしいです。