こんにちは、タマです。
今回は積立投資において重要な出口戦略についての解説記事です。
なお、この記事は東大バフェットさん(@utbuffett)のこちらの記事を参考に作成し、私のブログに来ていただいた皆さんにこの内容を広めることを目的としています。
2021年12月25日:本手法の有効性について追記しました。
インデックス投資の出口戦略
インデックス投資の出口戦略として有名なのは「定額取り崩し」と「定率取り崩し」だと思います。
定額取り崩し
毎回、一定の金額を取り崩す方法です。
特に4%ルールを設けた定額取り崩し手法はとても有効です。
資産5,000万円を4%定額取り崩しする場合
・1年目:5,000万円 × 4% = 200万円
・2年目:200万円
・3年目:200万円
・4年目以降同様
つまり、引退時の「資産 × 4%」の金額を毎年定額で取り崩すことになります。
この手法を使えば毎年一定額(引退時の資産 × 4%)が必ず受け取れるので、収支管理しやすいのが特徴です。
トリニティ・スタディの研究結果
トリニティ・スタディとは、1926年〜1995年までの米国の実績から、取り崩す金額と期間で資産が尽きない確率をまとめたものです。
2018年にWade Pfau博士がトリニティ・スタディをアップデートしており、1926年〜2017年の米国の実績を踏まえた研究結果が公表されています。それが下図です。
(出典:The Trinity Study And Portfolio Success Rates (Updated To 2018))
こちらの表を見ると株式50%:債権50%のポートフォリオの場合、4%ルールで取り崩すと30年後に残高が残っている確率が100%となっています。
つまり、このポートフォリオであれば毎年取り崩しても資産が尽きないことを意味します。
この結果からも4%ルールによる取り崩しがいかに効果的かわかるかと思います。
定率取り崩し
定率取り崩しは毎年の資産残高に対して定率で取り崩す手法です。
定額取り崩しと違って毎年決まった金額が受け取れるわけではありませんが、取り崩す%がポートフォリオの期待リターンよりも小さければ、資産は半永久的に枯渇しないことになります。
資産5,000万円でずっと横ばい相場の場合
・1年目:5,000万円 × 4% = 200万円
・2年目:4,800万円 × 4% = 192万円
・3年目:4,608万円 × 4% = 184万円
・4年目以降同様
相場が厳しい場合は受け取れる金額が年々減ってしまいますが、資産の安売りを防げるので定額取り崩しよりも長持ちします。
4%ルールで取り崩した場合だと、長期的に見ると理論上は資産が減らないことになります。
定額・定率取り崩しのどちらも資産を長持ちさせながら取り崩すとても良い手法です。
もう一つの出口戦略がある!
実はインデックス投資の出口戦略にはもう一つあります。
それは積立銘柄切り替え戦略です。(名前は適当に決めました笑)
積立銘柄切り替え戦略とは
積立銘柄切り替え戦略というのは、その名の通り積み立てる銘柄を毎年切り替えていく手法です。
通常の積立投資 | 積立銘柄切り替え戦略 | |
1年目 | S&P500 | S&P500① |
2年目 | S&P500② | |
3年目 | S&P500③ | |
4年目 | S&P500④ | |
5年目 | S&P500⑤ |
通常であれば毎年同じ銘柄をひたすら積み立てていくと思いますが、この戦略では毎年積み立てる銘柄をあえて変えます。
なぜこれをするのかというと、その年のリターンを銘柄ごとに分散させ、税金の繰り延べを行うためです。
積立投資で税金の繰り延べ
まずは積み立てる銘柄を変えない場合を見ていきましょう。
通常の積立投資
今回は毎年100万円をS&P500に積み立てる場合を想定します。(10年)
投資元本 | 現在価格 | 含み益(円) | 含み益(%) | 各年の動き | |
S&P500 | 1,000,000 | 1,150,000 | 150,000 | 15.00% | 15% |
2,000,000 | 2,687,500 | 687,500 | 34.38% | 25% | |
3,000,000 | 3,871,875 | 871,875 | 29.06% | 5% | |
4,000,000 | 3,166,719 | 833,281 | 20.83% | -35% | |
5,000,000 | 5,208,398 | 208,398 | 4.17% | 25% | |
6,000,000 | 6,829,238 | 829,238 | 13.82% | 10% | |
7,000,000 | 7,046,314 | 46,314 | 0.66% | -10% | |
8,000,000 | 8,850,946 | 850,946 | 10.64% | 10% | |
9,000,000 | 9,358,399 | 358,399 | 3.98% | -5% | |
10,000,000 | 12,430,078 | 2,430,078 | 24.30% | 20% |
見ての通り、10年後には含み益24.3%となっています。
もしここから取り崩す場合は、含み益である24.3%に対して約20%課税されることになります。積立金額がもっと大きければ無視できないほどの額になりますよね。
積立銘柄切り替え戦略
次に積み立てる銘柄を毎年変えていった場合です。
条件は先ほどと同じで毎年100万円を積み立てる場合を想定します。(10年)
投資元本 | 現在価格 | 含み益(円) | 含み益(%) | 各年の動き | |
S&P500① | 1,000,000 | 1,522,486 | 522,486 | 52.25% | 15% |
S&P500② | 1,000,000 | 1,323,901 | 323,901 | 32.39% | 25% |
S&P500③ | 1,000,000 | 1,059,121 | 59,121 | 5.91% | 5% |
S&P500④ | 1,000,000 | 1,008,686 | 8,686 | 0.87% | -35% |
S&P500⑤ | 1,000,000 | 1,551,825 | 551,825 | 55.18% | 25% |
S&P500⑥ | 1,000,000 | 1,241,460 | 241,460 | 24.15% | 10% |
S&P500⑦ | 1,000,000 | 1,128,600 | 128,600 | 12.86% | -10% |
S&P500⑧ | 1,000,000 | 1,254,000 | 254,000 | 25.40% | 10% |
S&P500⑨ | 1,000,000 | 1,140,000 | 140,000 | 14.00% | -5% |
S&P500⑩ | 1,000,000 | 1,200,000 | 200,000 | 20.00% | 20% |
合計 | 10,000,000 | 12,430,078 | 2,430,078 | 24.30% |
銘柄を切り替えても投資対象の連動先が同じであればパフォーマンスは通常の積立投資と一致します。
しかし、毎年銘柄を切り替えているので銘柄ごとに含み益に差が生じていますね。
もしここから100万円取り崩すとします。その場合どの銘柄を売却すべきでしょうか。
答えは簡単ですね。S&P500④です。
なぜなら含み益が0.87%しかないので、税金も0.87%分にしかかからないからです。
つまり、積立銘柄切り替え戦略を使うことで税金が繰り延べができるようになるのです。
当然ながら税金として払わずに済んだ分は投資元本として残るため、さらにお金を増やしてくれるでしょう。
銘柄切り替え方法
ここまでで積立銘柄切り替え戦略がどういうものかはわかっていただけたと思います。
しかし「銘柄を切り替えたらパフォーマンスが変わっちゃうじゃん!」という声もありますよね。
そんなときは下記方法がおすすめです。
- 連動先が同じ or 似ている投資信託に切り替える
- 別の証券口座で同じ銘柄を購入する
- 分配型と再投資型を切り替える
①連動先が同じ or 似ている投資信託に切り替える
S&P500に連動する優秀な投資信託は何種類かあるので、その中からチョイスすればパフォーマンスはそこまで変わらないはずです。
(例)楽天VTIとeMAXIS slim S&P500など
そもそもどの投資信託が上がるかは数十年後にならないとわからないので、優秀な投資信託さえ選べば問題ありません。
SBI証券が低コストなインデックスファンドを新たに提供するようです。
楽天VTIならぬ、SBI・VTIですね。こちらも銘柄切り替え戦略に活用できます。
②別の証券口座で同じ銘柄を購入する
これは全く同じ銘柄を購入したい場合に有効な方法です。
証券口座を分ければ当然別銘柄扱いになるため、銘柄を切り替えることができます。
証券口座数だけ選択肢が増えるので、切り替える銘柄が尽きた場合は思い切って証券口座を新たに開設することを検討してみましょう。
③分配型と再投資型を切り替える
投資信託を購入する際に分配型と再投資型が選べますが、この違いによって銘柄の扱いを分けることができます。
特に分配金が出ない投資信託であれば単に銘柄の扱いが変わるだけで済むので、パフォーマンスにも影響ありません。
※別扱いになる証券会社とそうでない証券会社があるみたいです。ご自身で確認してください。
以上の方法で積立銘柄を切り替えながら税金の繰り延べを行うことができます。
積立銘柄切り替え戦略のデメリット
この戦略のデメリットはめんどさくいということです。
銘柄を切り替えるのもそうですが、銘柄数が多くなるほど管理も面倒になります。
そうしたデメリットを受け入れられる人にとっては非常に有効な手段だと思います。
追記:本手法の有効性
本手法の有効性について追記します。
この手法は効果がない?
Twitterでこちらのツイートを見かけました。
質問をいただいた出口戦略を検証。利益が少ない口座から売却で税の繰り延べ効果を最大限に発揮できる。口座を二つに分けた方が良いと、かおるさん @monetopi のYouTubeで拝見したので計算してみました。効果はこのケースで12.1万円でした。これだと口座1つで良いかな?間違ってたら教えてください。 pic.twitter.com/1NIWSE29zN
— トミィ@NISA芸人兼米株プログラミング (@toushi_tommy) October 17, 2021
これはトミィさん(@toushi_tommy)が10年ごとに口座を分けて積み立てする場合をシミュレーションしたものです。
本手法は毎年積み立てる銘柄を切り替える戦略ですが、税の繰り延べ効果を最大限に発揮するという意味では似た手法ですね。
また、以下のリプライに対して次のように返信しています。
そうですね。私もそれを見て、手間に対する利益がどのぐらいかなと思って計算してみました。手間かけて得られるメリットは小さいですね。
— トミィ@NISA芸人兼米株プログラミング (@toushi_tommy) October 17, 2021
こちらは本手法について述べたものなので、結論としては「手間をかけてまで得られるメリットは小さい」ということになりそうです。
では、果たして本当にそうなのでしょうか。
的はずれなシミュレーション
トミィさんのシミュレーション結果は以下のとおりです。

年率6%で計算するとあまり効果がないようです。
でもこれって少し的はずれなシミュレーションなんです。
年率6%は年平均成長率のこと
このシミュレーションで使っている年率は年平均成長率のことです。
長期で運用すればするほどある一定のリターンに収束していきます。
以下の図を見てください。

投資をしている人なら一度は見たことがあるかもしれません。
この図は長期で運用すればするほどある一定のリターンに収束していき、元本割れしにくくなるというのを示しています。
これを見るとわかりますよね。年率6%というのは一番右の最終的なリターンです。
そして本手法で注目しているのは一番左の最もボラティリティの大きい1年間のリターンです。
したがって、年率6%でシミュレーションして大して効果がないという結論に至っていますが、これは実際の値動きと本手法の目的を完全に無視しています。
本手法の目的
本手法でやろうとしているのは税金の繰り延べです。
払う税金を少なくできれば手元に残るお金が多くなり、そのお金は引き続き運用に回すことができます。
この税金の繰り延べを考えたときに一番簡単な対策は利益を出さないことです。
当然ながら利益にしか税金はかかりませんから。
これを考えれば本手法がどの程度有効なのかはシミュレーションするまでもありませんよね。
なぜなら利益が最も少ない銘柄から売却する手法だからです。
本手法で考える必要があるのはそれをするための手間をどう感じるかというだけです。
手間を考えてみる
では、本手法における手間について考えてみましょう。
本手法でやらないといけないことは大きく2つです。
①毎年積み立てる銘柄を切り替える
これは証券口座をポチポチとクリックしていけば良いですね。
慣れていれば10分程度終わると思います。
②切り替え先の銘柄を調査する
実際に商品を購入するよりもこちらのほうが面倒です。
変な銘柄を選んでしまうとパフォーマンスが低下する可能性があるので、できる限り自分の目的にあった銘柄で揃える必要があります。
S&P500なら似たような商品が多いのである程度選択肢がありますが、それでも毎年切り替えているとさすがに足りなくなるので別の証券口座を開設する必要があるかもしれません。
これはかなり面倒ですが、操作としては特別難しいものではないので個人的には許容範囲内だと思っています。
最近では複数の証券口座をすでに持っている方も多いでしょうし。
以上を踏まえると本手法での手間は大したことないような気がします。(個人差あり)
何時間もかかるようなことをするわけではないので、Twitterを眺める時間を少し減らすだけで十分確保できます。しかも年に1回だけですよ。
本手法の効果
本手法で期待できる効果についてですが、正直なことを言うとわかりません。
今後のリターン次第ですし、運用額にもよります。
これを一つ一つシミュレーションするのはそれこそ時間の無駄なので私はしませんが、興味のある方は自分でリターンを設定してシミュレーションしてみてください。
このときに重要なのは年平均成長率を使わないことです。これは本手法でやろうとしていることを完全に無視していますので。
今後の増税リスクなどを考えると手間をかける意味はそれなりにあると私は考えています。
毎年切り替えなくても良い
本手法では毎年銘柄を切り替える方法を紹介していますが、必ずしも毎年切り替える必要はありません。
場合によっては2年に1回でも5年に1回でも良いでしょう。
あくまでも毎年切り替えていけば税金の繰り延べを最大限行うことができるよね?というだけのお話で、実際の運用方法はご自身で判断することです。
※切り替える間隔が長くなると含み益の分散効果は弱まります。
後半になるほど支払う税金が多くなる
トミィさんのシミュレーション結果にもありますが、税金を繰り延べしているだけなので後半になるほど支払う税金が多くなります。
しかし、これ自体は欠点ではありません。
繰り延べしただけ運用できる期間が長くなりますし、そもそもいつ死ぬかわからない以上、先延ばしにできたほうが良いはずです。
正しく取り崩すことができれば元本が枯渇することなく運用し続けられると思いますよ。
最後に
税金の繰り延べを考えればこれほど確実な手法はないと思います。
利益が少ないものから売却すれば支払う税金も少なくなる。
超当たり前のことをやっているだけです。
そして本手法の手間は大したことないと私は考えています。
(たぶんこの手間を気にするよりももっと気にしたほうが良いことがあるはず)
これをどう感じるかは人それぞれだと思いますが、私は本手法を用いて今後も積立投資を行っていこうと考えています。
まとめ
今回はインデックス投資の出口戦略には、
- 定額取り崩し
- 定率取り崩し
- 積立銘柄切り替え戦略
の3つあるよ!というお話でした。
ぜひ皆さんも検討してみてください。